2013年6月2日日曜日

非常ベルが鳴っている! 藤田伸二「騎手の一分 -競馬界の真実-」

発売前からかなり話題になってたせいか、書店でもなかなか見かけなかった藤田伸二騎手の新刊
「騎手の一分 --競馬界の真実--」を電子書籍版で購入。

電子書籍版のため、武豊の「ヤンチャなシンジらしい、おもしろい本やね」という、中身読んでないだろお前?! と言いたくなる推薦文がついてないのがちょっと残念です。



・序章 さらば競馬界
・第4章 なぜ武豊は勝てなくなったのか

といった目次から「暴露本か?!」という噂もありましたが、実際の内容は「エージェント制」「外人騎手編重」「大手クラブの台頭」「若手が育たない」など、現在の競馬界における問題点(問題と言えるものなのかは異論あるかも)を、血の出るような叫びとともに訴える真面目な内容でした。


まあ、問題点をぶちまけながらも「エージェントが悪い訳ではない」「外人騎手は、来られるならそりゃ来るでしょ」「大手クラブは別に何も悪いことはしていない」…とフォローして、どれも最後に
「悪いのはすべてJRA」で締めてしまうので多少うんざりする部分もあります。

もちろん、私もJRAがすばらしいと思っているわけではないので、あくまで「構成としてうざったい」だけですけどね。


一口馬主的に読むと、大手クラブの非情な騎手起用については末端ながらも恩恵を受けている立場だから複雑です。個人的には自分の出資馬に若手が乗るのはOKで、むしろやる気のない一流騎手(四位とか)が乗るのがイヤだけどなぁ。宮崎君とか杉原君とか好印象だったし。



読んでてちょっと笑ったのが、藤田、武と絶縁した某大手馬主K氏に関する記述。
ワールドスーパージョッキーズシリーズでその馬主の馬に乗った当時、こんな3ショット写真をブログに載せていたのに、内心では「嫌がらせかよ」と思ってた模様。抽選って皮肉なもんだ。
http://ameblo.jp/fujitashinji/entry-10402728481.html
よく見ると両サイドの2人は目が笑ってない気も…(笑)


文中に何度も「もうやることがない」「やっててつまらない」「勝ちたいレースはない」など、ほのめかすどころか近々の引退を明言しているに等しい部分が多々ありますが、現状の藤田騎手の居場所の無さを見ると、かつて田原軍団が肩で風を切って歩いていた時代を思い出し、90年代って遠くなったなーとなかなか感傷的な気分を味わえます。

2年前にはG1を4勝してるし、その頃はまだまだバリバリやっていたと思ったんだけど…


かつて後藤由之氏が成績が悪くないにもかかわらず、
「自分の居場所がなくなったということかな。調教師という仕事が理想像とは違ってきた」 
「競馬って面白いんだよ。馬主さんやファンがより魅力的に感じられる競馬に戻ってほしい」
と言って、調教師を勇退したのが2年前。長州力なら「非常ベルが鳴っている」とでもいう状況ですかね。


問題に対する対案がほとんど出てこないので読後感はあまり良くありませんが、貴重な証言としておすすめの一冊。
武豊が再度ダービーを勝った今、読む価値がさらに上がっていると思います。