2016年4月7日木曜日

なぜこのタイトルに…?「チャック・ノリスvs共産主義」

4月になって、Netflixに「チャック・ノリスvs共産主義」(日本未公開)が追加されたので見てみました、80分。

「最強の代名詞、チャック・ノリスが今度は共産主義をぶっ潰す」
…という内容では全然なくて、
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(内容紹介より)
チャウシェスク独裁政権下、西側メディアが禁じられたルーマニア。自由世界を見せてくれたのは、密かに吹き替え付きで出回っていた外国映画のVHSテープだった。
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西側諸国の映画が禁制となっている状況で、いかに一般大衆がそれに魅せられ、秘密警察の目が光る中ひそかに集まって観賞会、それが革命の芽になっていく…と言う内容。
日本では昼のテレ東でしか見かけない、チャック・ノリスやジャン・クロード・ヴァンダムと言った方々が、そこではヒーローであった…。
機動戦艦ナデシコのゲキ・ガンガー3など思い起こさせる話です。



見ていた一般人、西側の映像VHSを大量に所有して麻薬王のようになってる金持ち、VHSを翻訳しそのまま自分の声を入れる翻訳者兼声優のオバサンの3様な視点で語られていきます。


社会主義の抑圧にあっていると、人々はみな詩人になるのか全編が名言といっていいほど含蓄ある発言ばかり。
検閲シーンでは「画面に食べ物が多すぎるからこの部分はカットだ」とか「アニメキャラの持ってる風船がルーマニア国旗を想起させるからカット」などの収容所国家の滑稽さも浮き彫りに。


タイトルになってるのに、チャックノリスの話題が出るのは5分程度で完全にタイトル詐欺なんですが、「地獄のヒーロー」の名場面が一部インサートされ、人々の感動の表情と共に「チャック・ノリスの映画を観たあとは、今までの道端や石ころが全く違うものに見えてきたんだ」と言う名言が出たときにはもう…泣けるよ!!(笑)
          

ノイズがひどすぎて何が映ってるかまったくわからないビデオを必死で見る様には、かつて自分が特撮のビデオを台湾から共同で取り寄せ「音はわりと聞こえます、○○分の名乗りのシーンはそこそこはっきり見えます」など今では考えられないやり取りをしたことも思い出して懐かしくなりました。

ドキュメンタリーとしては、「VHSのビデオ群が革命に繋がった」というのは話が飛躍している気がして言い過ぎじゃないか?とか、友人によるとそもそも密輸前に共産主義国でも米国のドラマが放映されていた(西側の豊かさを宣伝することになり、すぐ打ち切り)らしいし、貴重な共産主義下の体験や証言も、もう一歩踏み込むとより良くなった…など惜しいところはありますが、それでもとても見応えのある映画。Netflixに加入している方はぜひ。