2016年2月17日水曜日

ジブリで働くということ。「エンピツ戦記 誰も知らなかったスタジオジブリ」

舘野仁美さんの「エンピツ戦記 誰も知らなかったスタジオジブリ」を読みました。
                      
著者の舘野さんは、「となりのトトロ」から「思い出のマーニー」まで27年間、動画チェックの仕事をなされてきた方で、この本を読むと、アニメーターと言う人がどういったことを気にしているかがよく解ります。
また、これまで数々のジブリのメイキングを見たうえで、この本の文章の底に秘められたものを考えてみるといろいろ「ジブリの真実」めいたものが浮かび上がってくることがあったりなかったり…。



構成の方のおかげでとても読みやすく仕上がっているのですが、構成者によるあとがきも載っていて、最初に鈴木敏夫さんから
「書き出しは『私は宮崎駿のせいで結婚できませんでした』、これで連載をはじめてくれる?」
と言われ、おずおずと舘野さんに聞きにいくと…
「それを言うなら『私は宮崎駿と鈴木敏夫のせいで結婚できませんでした』のほうが正確だと思います」
と返されたり、また、宮崎駿に了解を取りに行けば、
「舘野さんはずっと下級管理職として耐えてきた人なんです。涙あり、歯ぎしりあり。舘野さんの中には恨み節が渦巻いているんです。過去の話を聞いても、怖い話しか出てこないんですから、そんな恐ろしい連載はやめたほうがいいです!」
なんて、心温まるアドバイスを頂いたりと、構成の方の胃の具合を心配してしまいそうな記述が続きますが、なかでも他と比べて異様なのが「ホーホケキョ となりの山田くん」のパート。

スケジュールの遅れは目にあまる悲惨さでした。ところが、メインスタッフには切迫感があまりなく、「この仕事は○○さんでないとダメ」というふうに、あいかわらず「優雅な」制作体制を続けていました。そんなことをしていたら、時間と予算がいくらあっても足りません。

…など、同じ人が監督した最近の映画でも似た話を聞いたような。
その最近の作品は制作期間8年、制作費50億でしたっけ?
かの「メトロポリス」にはじまり、数々の「超大作の歴史」がありますけれど、クリエイターの業の深さはいつの時代も変わることがないと思わざるを得ませんでした。

とても面白い本ですので、宮崎駿やその作品に興味がある方はぜひ。