2012年3月4日日曜日

吸血鬼と精神分析

笠井潔の、矢吹駆シリーズ本編第6弾「吸血鬼の精神分析」を先ほど読了。
ページ数にして800ページ以上。11月頭から少しづつ読み始めて4ヶ月もかかってしまいました…



永田洋子、シモーヌ・ヴェイユ、ジョルジュ・バタイユ、マルティン・ハイデガー、ミシェル・フーコーに続く今回登場の著名人はジャック・ラカン(もどき)
本人をほぼそのまま引き写しただけの造型のようです。




ワトスン役のナディア・モガールが前回の事件でトラウマを抱え、精神的に不調というのもあってか、全体的に「パリの曇り空」を感じるというか、とにかく陰鬱で沈んだ雰囲気が充満しており、これがなかなか読み進まなかった原因かもしれません(笑)
とにかく構成が多層に絡みすぎて複雑極まりない内容です。面白いけど。


4作目の「哲学者の密室」や5作目の「オイディプス症候群」はまだバランスが取れていましたが、番外編の「青銅の悲劇」あたりからは、だんだん重厚・長大・複雑化がかなり極まってきてますな。
どうも、最近のは評論的な面が表に出すぎてるような…
出来はイマイチでも、「薔薇の女」の方が好きですね。

「観念的な人物が狂気に走る」時のスイッチが、前作と同じような出来事だったのも気になりました。


雑誌連載時も読んでいましたが、重要人物の名前が変わっていたり、終盤がだいぶ書き足されていたりと、雑誌の方も捨てられない状況。自炊が急がれます。


写真は、昨年11月に行われた「笠井潔講演」でもらったサイン。
サインと呼べるものじゃないですな(笑)

当の講演で「タイトルが雑誌掲載時と変わったのはなぜですか?」と質問しましたが、

「多神教と一神教というメタファーがあり、直しの最中に3.11(大地震)が起きたので、それを含めて膨らませ
『吸血鬼に対する精神分析』よりは『吸血鬼vs精神分析』にして主題を膨らませた方が見合うんじゃないかと思った」

とのことでした。いやー、いい質問したな当時の私(笑)