2012年8月15日水曜日

島田荘司サイン会に行ってきましたよ!

7月28日に南雲堂にて行われた「島田荘司全集Ⅴ」の発売記念サイン会に行ってきました。
サインのあと、個別に5分弱の歓談タイムがありまして、なかなか面白い話が聞けたと思うので対談風にまとめ。
読みやすいように若干文章に手をいれてますが、内容が変わらないようにはしています。
                        



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島田先生:本日はお暑い中…


私:いえ、お会いできて光栄です!


島田先生:まだお若いんですね?


私:いえいえ!もう36ですよ(笑)
…学生の頃に新本格のブームがあって、「子供の頃に読んでたミステリが帰ってきた!」という事で、働き始めたばかりでつらいはずの通勤時間も、毎日楽しかった。ということで島田先生にもずっとお礼を言いたかったんです。


島田先生:ああ、じゃあ綾辻さん達のものもよくお読みに?
そうか…もう綾辻さんも50になりますもんね~…

自分じゃお書きにならないんですか?


私:(面食らう)うーん、子供の頃に習作を書いたくらいですね。。。


島田先生:続かなかったですか?


私:小説を書こうとした事はたびたびあったんですが、どうも影響を受けたものとすっかり同じ内容になっちゃって…
それですっぱり諦めました。


島田先生:なにかトリックとか思いつきませんでした?


私:えーと、あまりにも密室にしすぎて窒息死しちゃうとか、そういうアホなものしか(笑)


島田先生:あー、中国にも最近、本格ブームが出てきましたけど、最初の頃はやっぱり孤島とか、館とか出てきて密室殺人が起こる。ていうものばっかりでね。


私:向こうじゃ、列車を使ったアリバイトリックとかは無理なんですかね?まともに来やしないイメージがありますが…


島田先生:アメリカや、…中国もそうですね、車の方に行っちゃいましたからね。


私:じゃあやっぱり(トラベルミステリは)日本独自の…


島田先生:そうですね。日本はまだがんばって時計のように正確に。
もともと江戸時代あたりは鐘を叩くとか結構いいかげんだったものが、時計というものが入ってきて、ダイヤというものが入ってきて…極端に、ヒステリーを起こすみたいに主要単位ってことになっちゃって…


私:なんか、一気に変なスイッチが入っちゃったんでしょうかね(笑)


島田先生:うん。極端な事になったから、鉄道ミステリというのが生まれたと思うんですよね。
その意味ではすごく良かったと思いますが、やはり日本独自の、狭い国土だから正確な運行が出来た…んでしょうねぇ。
でもまあ、日本海側に行くと、雪が降ると単線ですからすれ違い停車で必ず遅れちゃう、と。
これはこれで特殊な例ですから何かに使えるかもしれないし。鉄道ミステリには向いた国になりましたね~。
…そういう発想をお持ちなら、書けるんじゃないかって気がしますけど(笑)


私:(苦笑)


島田先生:なにか質問とかおありでしたら?


私:質問。というか、私、最近ミステリからちょっと離れ気味でして、なんだか最近ミステリ界がラノベ作家の踏み台にされてるみたいな感じがしてしまって…「え?俺たちの大好きなものって踏み台?!」て。
それで今では、かつて読んでた作家さんたちの新刊が出ると「あ、出てるな」と買うくらいで。
「もう、昔のものだけ読めばいいか!!」という気にさえなってるんですけど、そういうのって良くないですかね…?


島田先生:そうですね…わかりませんが、最近、限界研の人たちが作った評論本なんか読みますと、正にそういうこと書かれてますね~

                       
私:ああ、やっぱり…


島田先生:「踏み台」って言葉は使ってませんが(笑)中身に関してはおっしゃるとおりです。
これからどうなっていくのか…これから電子本というのが時代になってくると、ライトノベルのほうが強いかもしれない。
それが映像化されやすい。2時間ものになりやすい。ということであればさらに。
アメリカのように、推理業界が斜陽化していく恐れがないとは言えませんね~


私:それで新しいものが出てきてくれればいいんでしょうけどね。


島田先生:新人でもね、すごい骨太の、残りそうなすばらしいアイデアやトリック、作品が出てくれば良いんですけど、
わりと学園ものとか恋愛風味。ばっかりでは…


私:凝り固まっちゃってますよね。


島田先生:またそれが受けると思うんですよね。「あんまり頭使わないほうがいい」…という事になると、またそれがすごい数バッと出ちゃう。
という事が続いちゃうと…どうなんでしょうねえ。

今も話に出た電子本、アマゾンがやっていると講談社に6割くらいしか権利が入らない。その中から結局作家には5%くらいしか来ない。
10年後くらいにアマゾンが全部やるようになって、作家に50%くらいやるようになったら講談社なんか潰れちゃうかもしれない。
そうすると、産業としての小説のフィールドっていうのは将来性がちょっと不安ではありますね~。どうなっていくのか。もちろん続くとは信じてますが。


私:最近は電車の中でもほんとに本を読む人が少なくなって、スマートフォンばっかりで。
だいぶお客さんを取られちゃったんじゃないかと。


島田先生:そうですね~。あれで小説を読んでくれてるんだったら良いんですけど。
まあ、そういう読み方だったらライトノベルじゃなきゃ読めないですよね。
ものすごく難しい、本格のミステリなんかはちょっと無理ですよね~…


私:やっぱり(私が)古い人間なのか、どうもめくる動作が無いと馴染めなくて(笑)


島田先生:フフッ、そうなってくると、全集なんてものが出るのは私が最後じゃないかな。という気はしますね(笑)
「本格ミステリで全集」なんてもう無いんじゃないかな?という気はします。
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かつての、武闘派(笑)のイメージとは違い、驚くほど穏やかな語りくちで気さくに話してくれる、ものすごくいい人でした。
最後に、「最近は他にも作家さんがこういうサイン会やトークイベントする事が多くて結構嬉しいんです」と言ったところ。
「ああ、そういうのはドンドンやったほうがいいよね」とのこと。
またこういった企画はあると思いますし、その際はぜひお目にかかりたいところです。

サイン会に来たファンにいきなり「書かないんですか」というのはちょっと面食らいましたが、非常に「らしい」話で、例えるならば富野由悠季さんに説教されるようなものでしょうか(笑)
未だに発掘には貪欲なんだな~。

他にも随所に「島田節」を覗かせるのを見られて満足でした!