2012年12月20日木曜日

われ敗れたり

日本将棋連盟の永世棋聖、米長邦雄会長が亡くなりました。
また1人、奇人がこの世から去ってさみしい限りです。

将棋にはあまり詳しくないのですが、今年の頭にはニコニコ動画でボンクラーズを相手にした「電王戦」を大変楽しませていただきましたし、第二回も間近に迫って特設ページも出来ていたというのに…

※第二回将棋電王戦特設ページ
http://ch.nicovideo.jp/channel/denousen?fb_action_ids=349450761819869&fb_action_types=og.likes&fb_source=timeline_og&action_object_map=%7B%22349450761819869%22%3A10150535290616079%7D&action_type_map=%7B%22349450761819869%22%3A%22og.likes%22%7D&action_ref_map=%5B%5D

このボンクラーズとの戦いをめぐる著書「われ敗れたり」が遺作で、棋士としても生涯最後の勝負ということになるのでしょうか。
                         
この本、書店で「お、あの対戦の本が出たのか~…」なんとなく立ち読みしてみたら、あまりにも面白くて衝動買いしてしまった今年唯一の本でした。

以下は夏にやった書評プレゼンの会で発表した際の文字起こし。(だいぶ盛ってますが)
読んで面白かった勢いそのままで題材に選びましたが、年末にこんなことになるとは本当に残念です。

謹んで、米長永世棋聖のご冥福をお祈りいたします。




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今回紹介する本は、米長邦雄の「われ敗れたり コンピュータ棋戦のすべてを語る」です。

これは、今年(2012年)1月にニコニコ生放送で行われて、のべ100万人以上が観たと言う、
最強のコンピュータ将棋ソフト「ボンクラーズ」と、現役引退して8年過ぎた元トッププロの米長邦雄会長が戦った
「電王戦」という対局がありまして、、、結果はボンクラーズが完勝。
米長会長は、公的な試合で初めて「コンピュータに負けた棋士」という称号を授かりましたが、傷つく要素の少ない引退した人間が出てくるあたりは、将棋界もなかなか喰えない感じです。
アントニオ猪木との戦いを控えたウィリー・ウイリアムスが事前に極真会館を破門されてから出てくる。みたいなものでしょうか。

この試合が実現に至る道のり、そして会長がボンクラーズとの力関係を把握して、どういう戦略で望み、いかにして戦ったかというのを面白エピソードも交えて、将棋をよく知らない人(俺とか)にもたいへん楽しく、読みやすく書かれた本です。

「人間対機械」という話は、アメリカの昔話なんかでもたびたび出てきまして、鉄杭打ちのジョンヘンリー(馬じゃないよw)が電気ドリルと穴掘り競争をする。とか、あらいぐまラスカルでも馬車と自動車が競争する話があったりして、「機械に追い越されていく人間側が最後の抵抗をする」というニュアンスでたいがい機械側が悪役風味で描かれるものですが、あまりそうならないのは米長会長のとぼけたキャラクターと、コンピュータの「ボンクラーズ」という名前によるところが大きいと思います。
「ボンクラーズ」なんて名前の奴を敵と思うことはなかなか難しいですからね。


今回は「引退した元トッププロが1日限りの復活をして強敵に挑む」というシチュエーションだった訳ですが、この敗北を受けて来年は、気鋭の棋士5人がコンピュータと5対5の団体戦で一気に決着をつける。というかつての新日本プロレス正規軍対維新軍のような展開になってまいりました。燃えますね。

それとこの対局後の記者会見がなかなか抱腹絶倒な内容で、対局時よりも視聴者数が5万人くらい増えたのですが、
記者会見の模様も全文書き起こされるという、なかなかモノの解った作りになっております。

今回の「電王戦」があまりにも好評なので、将棋連盟もファン拡大の大きなチャンスと捉えていると思うのですが、
来年の5対5イリミネーションマッチを楽しみに見守りたいですね。
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なんだか別の意味あいが追加されてしまった第二回電王戦ですが、プロ棋士さんたちにはがんばってほしいところです。